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わが社のIT化 自社IT化に向けた取り組み、悩みやニーズを通してIT化の現状を探る

→記事一覧
物流センター管理システムの導入 激しい価格競争に負けないこと。高度な荷主様ニーズに応えること。そのための物流システムを、ITのチカラで実現していきたい。
CompanyOutline 会社概要
川崎運送株式会社
昭和19年の創業以来、倉庫運送業者として関東・東海地区を中心に事業を展開。2003年にはITを全面的に取り入れた静岡物流センターを開所するなど、効率的な物流システムの構築に努力。現在、6営業所、4物流センター(倉庫併設)をはじめ各地に工場、倉庫を擁する。本社は川崎市川崎区。
 
→会社情報

厳しい価格競争の波に洗われる倉庫物流業界において、着実な成長を続けている株式会社川崎運送様。その秘訣と戦略について、同社のIT化を牽引する石羽氏、方円氏にお話を伺いました。

<本記事に関連する商品・サービス>
→倉庫管理ソリューション
→配送管理ソリューション
→フレッツ・グループアクセス

これまでの倉庫運送業に足りなかったのは、社内の「見える化」

 倉庫運送業者が置かれたビジネス環境は厳しい。荷主からの発注を受け、配車し、倉庫から必要な商品を品出しし、トラックに積み込み、配送先まで届ける。典型的な労働集約型の業界だけに、簡単にはコストを削減できない。一方で、より低廉な運賃を求める声は、大きくなるばかりだった。

 「年功序列で人件費は増えていくのに、荷主様からは運賃の低廉化を要求される。このジレンマを解消し、売り上げを伸ばすための改革を行っていくには、経営のスピードアップが必要でした。」(石羽氏)

 そのためには、毎日の売り上げや経費など、経営判断のための材料がなければならない。ところが、それが手に入りにくい理由があった。

 「今日の利益を把握する。予算の中で仕事をする。他の業種では当たり前のことが、この業界ではとても難しいのです。この業界はほとんどが中小企業であり、一言で言ってしまえばどんぶり勘定の世界です。たとえば燃料費や高速道路料金などにしても、月次の請求書がくるまで分かりません。つまり、重要な数字が一ヶ月遅れでしか把握できないのです」(石羽氏)

 「もうひとつには、自社の業務フローが統一化されていない、という事情もありました。私たちの業界は、荷主様の業務の一部を担うという性質のため、荷主様のやり方に合わせるのが当たり前といった慣習があります。荷主様ごとに運賃規定が異なり、伝票も千差万別です。ところがそれでは、自社の全社的な動きを知る指標が迅速に把握できません」(方円氏)

 「その日、社内で何が起きたか」「どう会社が動いているか」を、デイリーで見ることができない。それを、どう「見える化」するか。業務改善の出発点はそこにあった。そして、それにはIT化が大きな役割を果たすと考えた川崎運送様の挑戦がはじまった。

IT化のファーストステップは、社内の意識改革

 IT化への取り組みを決めたものの、そのために超えなければならない、高いハードルがあった。運転手はもちろん、事業所の所長たちも、みなパソコンになじみが薄い。キーボードを打った経験がある者も、決して多くはなかった。まず、IT導入の地ならしが必要だった。

 「まずはグループウェアの導入からはじめました。情報をメールで交換するだけのシンプルな使い方がメインでしたが、何よりパソコン環境を社内に浸透させるのが大きな目的でした」(方円氏)

 「それを使い、毎日、私たちから情報発信したわけです。ちゃんと受信したかどうか電話で確認し、利用を促す。それを粘り強く繰り返しました」(石羽氏)

 腕一本(運転技術)に誇りを持つ社員ぞろいだけに、抵抗がなかったわけではない。中には「フォークリフトがうまく扱えればそれでいい」と、日報さえ書かない社員もいた。それを、「モノを運ぶだけでは、これからの時代、いくらも売り上げが立ちません」と、根気強く説得し続けた。

 「さらに、業務改善のモデルとなる事業所を指定し、集中的に意識改革を図りました。IT化しようにも、自社の伝票すら統一されていないという状況でしたから、所定の伝票をきちんとつくることからはじめ、そこから未収金を把握し、いつまでに回収するといった『取引』の基礎的な発想を育てようとしました」(方円氏)

 「事業所の仕事の進め方を整理し、一人ひとりの役割をはっきりさせたわけです。こうなると、IT化がスムーズになりますからね」(石羽氏)

 意識改革と業務改善。IT導入への下地は、徐々に固まりはじめた。

新しい物流システムの象徴、それが静岡物流センター。

 社内の業務フローが整理されつつあるとはいえ、荷主企業との密接なパートナーシップが重要となる倉庫物流業界では、自社内だけのシステム化では大きな効果は見込めない。
 突破口を開いたのは、2003年に開所した静岡物流センターだ。ここでは、大手飲料食品荷主との取引がシステム化されている。工場から届いた製品は、商品名、製造日、数量などがデータベース化され、これにより検品や棚卸しなどが正確かつ迅速に行えるようになった。また、在庫引き当て(荷主からの指示をうけ、どの商品を、どこから、どれだけ出荷するかを指示するとともに、在庫を確認する作業)も大幅に効率化された。さらには、納品までの履歴が蓄積できるため、追跡調査もできるようになった。
  まさに、荷主と運送会社の双方にメリットの大きいシステムだと言える。

 「この荷主様だけでも日に3回の発注があり、入出庫で200台近いトラックが出入りします。しかも、商品によってはどの製造日のものを出荷するか、ロットも指定されるのです。これを人間の力だけで管理するのは不可能です」(石羽氏)

 ひと握りの大手を除き、これだけのシステムを構築したのは川崎運送様が初めて。これがなければ、荷主のパートナーを務めるのは不可能だったと、石羽氏は語る。

 しかも、まったく新しい物流システムにもかかわらず、このセンターはまったくノートラブルでオープンした。開所初日に要した社員講習は、ほんの1時間ばかり。地道な社員の意識改革を通じてIT化の下地を作ってきた努力が、見事に実った。

 さらに、携帯電話を使った配車予定指示システムも導入した。これにより、運転手は『翌日の予定』をi-modeで確認できるようになった。
 「これまでは、各運転手が配車担当に電話で確認していたため、担当者が電話対応に追われてしまい、配車業務に支障をきたしていましたが、i-modeの活用により、大幅に業務が効率化されました」(石羽氏)

 「これらの取り組みによって『見える化』が進み、リアルタイムの情報共有化によって、経営のスピードも着実にあがってきました。」(方円氏)

提案営業ができる「物流エキスパート」を目指し、次の布石を

 ここまでIT化を進めるにあたって、川崎運送様が選んだパートナーは、NTT東日本だった。「端末に関するノウハウ、ネットワークに関するノウハウなど、各社各様のノウハウがありますが、それらを活用していく全体構想のノウハウを持っている会社はどこか、ベンダ選びの際は、それを考えています」(石羽氏)

 「私にはバイブルがあります。IT化の検討を始めたころに、NTT東日本が提案してくれたグランドデザインです。これを見ると、我々が何をなすべきかが一目瞭然です。長い時間をかけて、周辺部分から段階的にIT化を進めていますが、常にそのグランドデザインを見ながら、全体構想とのギャップや今後の進め方をチェックしています」(石羽氏)

 しかし、それだけで、石羽氏、方円氏とも、従来の慣習にとらわれる社員たちを導き、IT化に獅子奮迅することはできなかったに違いない。その熱意はどこから生まれてきたのか。

 「これまでの倉庫運送業者は、荷主様まかせの部分が多く、社員たちも自分の業務を淡々とこなすだけでした。それでは、もう生き残れません。事実、すでにコスト高、運賃安の波に飲まれて廃業した同業者もあります。そうではなく、私たちは『提案営業』ができる、物流のエキスパートになりたいのです」(石羽氏)

 たとえば、異なる荷主の商品を一括して配送する共同配送。これが実現できれば、より効率的で安価な配送サービスを提供できる。そのためには、説得力のあるデータを取り、効率的な配車・出荷作業が瞬時に行えるITの力が不可欠だ。

新配車センター構想の概要
新配車センター構想の概要
(図をクリックすると拡大表示されます)

 「その戦略を具現化させるための布石も、もう打ってあります。NTT東日本の協力を受け、近々『配車センター』を開所する予定なのです。オンラインでの発注はここで一括して受け、どの拠点のどのクルマを、どう使うか、瞬く間に指示できるようになります」(石羽氏)

 これにより、物流システムがさらにグレードアップされ、荷主の発注から、在庫引き当て、ピッキング(商品の品揃え)、配車手配、運転者への配送予定の指示などが、いちだんと効率化される。荷主からの追加注文などにも柔軟に対応できるようになるという。

 「まずは大手飲料食品荷主様の取引から実現していきます。ただ、他の荷主様との取引はうまくオンライン化できていない実情もあるので、今後は、オンライン受発注を増やし、同様のサービスを他の荷主様との間でも提供できるようにしたいと考えています」(方円氏)

 倉庫運送業者として、荷主に提供できる新しいサービスとは。厳しい経営環境を乗り越えるための物流システム改革とは。川崎運送様が、その新しい答えを示してくれる日は近い。
 

取材を終えて

運送業ならではの、IT化の難しさがあるにも関わらず、静岡物流センターがノートラブルで開所できたのも、おふたりの『影の努力』の賜物だと痛感しました。準備中の配車センターの案件でも、ぜひ、そのご努力とご期待に報いたいと思います。
最後になりますが、ご多忙中にも関わらずお時間を割いてくださった石羽様、方円様に厚く御礼を申し上げます。

株式会社NTT東日本-神奈川 川崎営業支店 斎藤 裕、秋元 敦


 
Profile 今回お話を伺ったのは…
石羽輝行
事業本部 取締役本部長
大手酒類・食品メーカー出身。これまでの物流業界にない視点で同社の課題を洗い出し、物流システム改革を成功させてきた、IT化の推進役。
  方円信哉
営業開発本部 業務統括 業務部 課長
大手デパートで流通の手腕を磨き、1999年に入社。新規取引先の開拓に努めつつ、そのための武器となる近代的な物流システムの構築に力を注ぐ。

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