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IP電話の導入 コスト削減は行政の重要課題。既存のシステムにIP電話を組み込み通信料の大幅削減に成功しました。
CompanyOutline 会社概要
藤沢市役所
神奈川県藤沢市は昭和15年10月1日に市制施行。人口約38万人の都市として発展を続けている。2001年3月に「藤沢市地域IT基本計画」を策定し、115の事業を計画し、地域の情報化を推進。行政の思い切ったIT化はなかなか進まないのが実情だが、藤沢市役所は常に素早い対応でIT化の先陣を切っている。
 
→市役所情報

IP電話を導入することで、通信コストの大幅な削減を実現した藤沢市役所様。既存設備を有効活用したという同市のIP電話導入の取り組みについて、IT推進課の須藤氏、坂間氏にお話を伺いました。

<本記事に関連する商品・サービス>
→ひかり電話ビジネスタイプ
→スーパーワイドLAN〔現BusinessEther タイプSWL(オーダメイドタイプ)
→情報通信コラム:企業におけるIP電話活用の最新動向

年間1000万円以上のコスト削減が目標

 最近注目されている「IP電話」は、文字データや画像データなどと同様に、音声データをインターネットやLANなどのネットワーク上に載せて送受信する通信方式である。従来の電話回線と異なり、多数の交換機による中継を経なくても通信できるため、通話料が格安となるのが特徴だ。
 神奈川県藤沢市では、このIP電話を活用して、積極的な通信コスト削減に取り組んでいる。

 「コスト削減というのは、どの自治体でも避けて通ることができない重要な課題だと思います。例えば、私たちIT推進課の事業費は、年間9億数千万円ほどありますが、これを5年間で1億円くらいコスト削減したいという目標を立てています。そのために、システム構築・運用方法・調達方法という3点について見直しを行っています。2006年4月にスタートしたIP電話の導入も、こうした見直しの一環として行ったものです」(須藤氏)

 IP電話の導入以前、藤沢市では、市役所本庁と市内の出先機関との間を専用の内線電話でつないでいた。内線は1本につき月額1万円ほどであり、定額制のため使っても使わなくても料金は変らない。また、市内の学校と本庁の間での電話は、公衆回線による市内通話を使用してきた。これらの通話網をIP電話に置き換えることにより、現行経費の15%程度、年間1,000万円程度以上の通信コスト削減を実現するのが藤沢市役所の目標だった。

 「この目標を達成するために何をしたら良いか、公募提案という形でいろいろな業者さんからプランを出していただきました。それらのプランを、単年度だけのコストではなく、6年間のトータルコストを含めて比較検討していきました。その結果、あることが分かってきたのです。それは、『既存設備をうまく使わないとコストメリットが出てこない』ということです」(須藤氏)

既存の通信設備を活用したIP化が必要

 現在、多くの自治体では、基本的に、データ系と音声系とを分けたシステムを採用している。つまり、LANはLAN、音声は音声で、別個に回線を用意するという方法である。しかし、IP電話を導入するにあたって、新規に回線を引くのでは、それほど多くのコストメリットは望めない。そこで、既存の通信設備を活用したIP化ができないか、という発想が出てくる。
 藤沢市役所様のケースでは、そうした既存設備に当たるものが、NTT東日本の提供するネットワークサービス「スーパーワイドLAN」だった。スーパーワイドLANは、通信速度100Mbpsのネットワークシステムである。藤沢市では、これを平成14年に導入。当時、まだ東京の一部の地域でしか使われていなかったスーパーワイドLAN の通信回線を、地域内にいつでも引けるよう体制を整え、その回線で学校や公共施設を結ぶことにより、学校イントラネット、地域イントラネットが実現した。

 「地域全体をブロードバンド環境にするというのが、藤沢市の大きな施策です。地域の情報化を推進するため、2001年3月には『藤沢市地域IT基本計画』を策定しました。この計画を具体的な行動に移したのが、スーパーワイドLANの導入です」(須藤氏)

 実は、この時点で、スーパーワイドLANの回線を流れているデータ量は少なく、使われていない空きの部分がかなりあった。そこで、NTT東日本では、IP電話の導入にあたって、音声データを他のデータと同時にスーパーワイドLAN上に流すという方法を提案した。

スーパーワイドLANの利用による通信コストの削減
スーパーワイドLANの利用による通信コストの削減
(図をクリックすると拡大表示されます)
 「理論的には、音声データを入れても支障はない、回線にはまだまだ余裕があるということだったのです。つまり、既存のスーパーワイドLANを利用できたからこそ、コストを抑えたIP電話導入が可能になったわけです」(須藤氏)

 スーパーワイドLANを基盤にしたシステム構築を行うため、藤沢市役所様はNTT東日本をパートナーに選んだ。

慎重を期しての検証実験

 理論的には、スーパーワイドLANに音声データを流しても、帯域が異なっていれば、他のデータが干渉することはないはずである。しかし、実際にシステムを動かした際に、ノイズが生じたり、通信が途切れたりすることが絶対にないとは言い切れない。

 「市役所としては電話は通信手段の命。故障がある、障害が起こるといったことは簡単に許されるものではありません。本当に問題なくシステムが動くのか、きちんとした検証が必要でした」(坂間氏)

 そこで、2005年6月、NTT東日本の協力の下、検証実験としてシステムの一部を3日間動かした。その結果、データ的にも良好な数値を得られていることが確認され、体感上も従来と同等の、むしろ少しクリアな音質となることが分かった。

 NTT東日本では「何曜日の何時にどのくらいの量の発着があるか」をすべて調べるトラフィック調査も行った。この調査の結果から、必要とされる回線の本数を決めていった。

 「IP電話を導入する際の留意事項としては、市民に迷惑をかけないということがありました。具体的には、市民がこれまで使ってきた公共機関の電話番号が変ってしまってはならないということです。それから、いくら金額が安くなっても、災害時に使えないのは好ましくない。東海地震などで起こると想定される大規模停電の際にも、ちゃんと電話が通じるということが大切です。また、110番や119番がかけられないといった、通常IP電話によくある問題点もひとつ一つ克服していきました」(坂間氏)

 藤沢市役所様は、災害時に備えIP電話と従来の電話回線を併用する形をとり、平常時には料金の安いIP電話を優先的に選択するようにシステムを組んだ。
 こうしてIP電話の導入を進めた結果、内線専用線の廃止によるコスト削減で年間800万円、外線の廃止で300万円、通話料の削減で400万円、ここから新規投資分を差し引いても年間1,000万円以上のコスト削減が実現した。

IP化によって利便性も向上

 コスト削減という結果は、数字で上がってくるので目に見えやすいが、目に見えにくい部分でも、IP化によって利便性が向上する効果が出ているようだ。

 「例えば、いままで回線ごとに個別に処理されていた電話料金の計算を、本庁で一括処理できるようになったことで、事務処理の簡便化と効率的な予算の組立てにつながっています。また、学校では、従来のアナログ回線を残したまま、IP電話回線を引いたので、その分使える電話機が増えました。さらに、学校‐学校間が内線でつながったので、A学校からB学校への電話の転送ができるようになりました。これにより、例えば、市民から学校に問い合わせの電話が入ったときなど、これまでは『教育委員会に電話してください』と言って電話を切っていたのが、切らずに転送できるようになったのです」(坂間氏)

 藤沢市役所様は、現在、IP電話システムのエリア拡張を行っているところだ。消防署所や保健所など、いまのところIP電話がつながっていない部門をシステム内に取り込むことで、さらなるコスト削減が可能になると見ている。

 「これからさらにIP化を進めるにあたっては、いままで市民に周知されていた出先機関の代表番号とそれに付随する子番号をいかにして減らしていくかが課題となります。5年、6年かけてIP電話のダイヤルインの番号が市民に周知されてくれば、さらなるコスト削減につながるでしょう」(坂間氏)

 現在、藤沢市役所様が進めるIT化は、IP電話システムだけにとどまらない。2006年3月には、「『静』の情報化から『動』の情報化へ」を基本理念とする「藤沢市地域IT基本計画(改定)」を策定しており、シンクライアント、サーバーベース・コンピューティング、生体認証(バイオメトリクス)など、情報セキュリティ・個人情報保護のためのシステムも積極的に導入している。IT化推進を行政の中心課題のひとつと位置づけ、市長が先頭に立って取り組んでいるところだ。

取材を終えて

ITをめぐる市民の意識や社会情勢は大きく変化してきています。状況の変化に対応するため、「藤沢市地域IT基本計画(改定)」を打ち出した藤沢市役所様に対して、情報通信会社として少しでもお役に立てればと願う次第です。
最後になりますが、ご多忙の中にてお時間を割いていただきました須藤課長、坂間主査へ御礼を申し上げます。
ありがとうございました。

NTT東日本 神奈川支店法人営業部 大川 潤子    


 
Profile 今回お話を伺ったのは…
須藤俊明
IT推進課 課長
スーパーワイドLANなど情報系システムの開発を中心に、構想・内部検討段階からシステム稼動まで、IP化事業全体を推進してきた。
  坂間英己
IT推進課 主査
2005年度までは管財課に勤務し、IP電話導入に伴う現場でのシステム設置業務を推進してきた。2006年4月からIT推進課に配属。
スーパーワイドLANは、平成18年5月より、サービス名称が「BusinessEtherタイプSWL(オーダメイドタイプ)」に変更されている。

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