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ブランディング=価値の創造こそ、私の使命。

第5回は、ローズ ホテル横浜と重慶飯店を営み、横浜・中華街の活性化にも貢献している李社長にご登場いただきました。

李 宏道氏 李 宏道
株式会社ローズ ホテルズ・インターナショナル
代表取締役社長 総支配人 株式会社重慶飯店 代表取締役社長
国立台湾大学工学院卒業後、(株)ホテルホリデイ・イン横浜に勤務。その間、米国コーネル大学ホテル学科2001AMPを修了、その後ホテルホリデイ・イン横浜の代表取締役社長総支配人に就任。2003年、(株)ローズホテルズ・インターナショナルを設立。現在、同社の代表取締役社長総支配人。
これからの経営は、ブランディングが大切なテーマ

Photo---中華街を歩くたび、重慶飯店のお土産袋を手にした人の多さに驚かされます。

 ありがとうございます。重慶飯店はブランディングがうまく進んでおりまして、多くの方から「横浜の中華街で四川料理を食べるなら重慶飯店」と言っていただけるようになりました。

 また、重慶飯店の新館を擁するローズ ホテル横浜も、「美味しい中華料理が食べられるホテル」ということで、他の一流ホテルに劣らぬ高い評価をいただいております。

---重慶飯店といえば、中華街でも大変な老舗ですよね。

 開業は1959年ですから、もう半世紀近い歴史があります。当時の中華街で食べられるのは、広東料理や北京料理ばかり。そんな中、私の父母が「四川料理を手がければ、もっと個性と魅力のある店づくりができるだろう」と考えたのが始まりです。

 幸いなことに、四川料理の重鎮・陳建民さんと父が大変に親しい間柄で、全面的に後押ししてくれることになりました。そして陳さんの愛弟子を初代料理長に迎え、現在の本館が開業となったわけです。

---その後、ホテル業にも進出された理由は、何だったのでしょう。

 やはり父母の発案です。20年以上も昔、サンフランシスコのチャイナタウンを視察したときのこと。そのすぐ隣にインターナショナルホテルがあり、多くの観光客たちで賑わっていたのを見て、ふたりは「横浜の中華街をナショナルブランドにするためには、ホテルが欠かせない。中華街の活性化にもつながるはずだ」と気づいたんですね。帰国後、さっそく世界的なホテルチェーンとフランチャイズ契約を結び、1981年にホリデイ・イン横浜がオープンすることになったのです。

---それが、ローズホテル横浜の前身になるわけですね。

 フランチャイズ契約が満了する2003年に、独立系のローズホテル横浜として再スタートすることにしました。せっかくうまくいっていたホテルを、なぜ改称までして、と訝しく思われるかもしれませんね。それは、これからのビジネスではブランド力が大切だと感じていたからなんです。同じ苦労をするのであれば「他人のブランドではなく自分たちのブランドで」というわけですよ。
 フランチャイズ契約が解約されるのにともない、2003年、ローズホテル横浜として再スタートすることにしました。実は、これは私にとって念願だったのです。というのも、これからのビジネスでは、ブランドをいかに磨きあげるかが価値を創ること、経営戦略として大切なことだと、強く感じていましたから。すでに重慶飯店ではかなりそれがうまくいっていましたが、ホテル業についても、「他人のブランドなんて持っていても意味がない。どうせ汗水流すなら、自分たちのホテルブランドを持とう」というビジョンを、早くから描いていたのです。

---中華街、重慶飯店、ローズホテル横浜。社長のお話を伺っていると、それぞれのブランドを大切にする姿勢が伝わってきます。

 私にとって、ブランディングとは価値をつくることなのです。ブランド力の有無や強弱によって、明日のビジネスが大きく変わってくる。それが、これからの経営のポイントだと思っています。

ブランドづくりのために、できることのすべてを

Photo---多くの企業が、ブランディングのために試行錯誤を繰り返しています。御社の場合は、どのような努力をされたのですか。

 地味なことばかりですよ。たとえば重慶飯店の例であれば、まずお土産ですね。お土産を持って帰る、親しい方に差し上げる。すると、「どこで食べたの」「美味しいね」という会話とともに、どんどん店の名が広がっていきますから。

 そのために、重慶飯店ではいちはやく売店を設けましたし、15年も前に香港のデザイナーに依頼し、かわいい赤色の目立つお土産袋も用意しました。さらに91年には、中華街ではじめて通信販売にも乗り出しています。これも、収益というよりは重慶飯店というブランドを全国に知らしめたかったからです。

---「中華街の味が全国で味わえる」ようになったわけですね。

 ところが、これがまったく鳴かず飛ばずで(笑)。立派なパンフレットをつくり、広告やDMにコストをかけ、多くの手間をかけたのに、さっぱり利用してもらえませんでした。たった2年で「もう通信販売はあきらめよう」と思ったほどです。

 転機は身近にありました。ふと立ち寄った書店で、袋にチラシが入っているのを見て「これだ!」と気づいたのです。いきなり全国に名前を知らしめようとしても、それは無理というもの。むしろ、お得意様の口コミをうまく刺激してあげればよいではないか。そう頭を切り替えて、お店でお土産を買ってくれたお客様に、品物と一緒にパンフレットをお渡しするようにしました。うれしいことに、ホテルの電話交換台…当時から24時間体制だったのですが、そのスタッフも「自分たちに何かできないか」と言い出してくれて、注文を24時間受け付けられる仕組みができたのです。すると、驚きましたね。みるみる利用者が増えはじめていきました。

---重慶飯店でさえそうなら、ローズホテル横浜のブランディングは、もっとご苦労が多かったと思うのですが…

 確かに、ホリデイ・イン横浜とちがい、ローズホテル横浜は知名度ゼロからの出発でした。しかし、全国的に名を知られてきた重慶飯店が出店していますから、そのブランド力を使えるメリットは小さくありません。
 たとえば、中華料理の美味しいホテルをお探しのお客様にとって、ローズホテル横浜は名だたる一流ホテルと並んで、必ず選択肢のひとつにあげていただけます。

メールからはじまった、IT活用への道程

---ところで、社長はITの導入にも積極的だったと伺っています。社長とITの出会いについてお伺いしたいのですが。

 私がITを意識するようになったのは、はじめてメールを経験した1995年。あのときの感動は、ちょっと忘れられませんね。というのも、当時、私はニューヨークや北京など、各国のホリデイ・インとのやりとりにずいぶん苦労していたのです。通信手段といえば電話かファックス。わざわざ時差を考えて電話するなんて、煩わしい限りです。

 ところが、メールはそんな面倒を一気に解消してくれました。夜メールを送っておくと、目覚めたときには返事が返っているのだから驚いたものです。海外出張中でも、会社の情報を随時チェックし、物事を決定し、指示を出せる。「メールなら、あれもできる、これもできる…これは一人で何役もでもこなせるぞ」と気づきました。

---1995年というと、ちょうどインターネットが普及しはじめた頃。メールのメリットなど、ご存じない人も多かった頃ですね。

 その通りで、私も、まずメールがどれだけ役立つものか従業員に実感してもらうことから始めました。96年に、部課長全員にアドレスとパソコンを持たせ、気軽にメールが利用できる環境を整えたのです。すると、実際にみるみる経営がスピードアップしていく…大手の外資系ホテルでも、一台のパソコンを十人近いスタッフが並んで使っているという時代の話です。

---現在は、どのようにITを活用されていらっしゃいますか。

 大きく分けてふたつの方向があります。ひとつは基幹系の業務支援です。各セクションのスタッフが、収益を逐一把握できるようにするのが、その目的ですね。もうひとつがマーケティングで、これはホームページがメインになっています。

---近年では、ホームページで宿泊予約するのも、もう当たり前になってきていますよね。

 目指しているのは、旅行代理店に負けないホームページ。お客様に直接アクセスしていただき、予約していただくのが理想です。これなら代理店に支払う手数料が発生しませんからね(笑)。現在、宿泊予約の39%がホームページでのお申し込み。これをもっと高めるために、ホームページの見直しと更新には力を入れています。

 ただし、力を入れると言っても、むやみにコストをかけていいとは考えていませんよ。企業にとって大切なのは、やはり利益率です。そのため、5年も前からeコマース事業室を立ち上げ、費用対効果をにらみながら計画の立案や見直しを行う仕組みをつくってきました。私たちのように、eコマースに組織的に取り組んできたホテルはそう多くはないのではないでしようか。

---その5年前と今では、eコマースの環境や活用法もずいぶん変わってきているのではないでしょうか。

 確かに、ちがいますね。以前は「とにかくホームページを作りさえすればいい」といった感じでした。でも、これからは、それでは通用しません。さまざまなポータルサイトとどう連携していくか、といった取り組みがポイントになると考えています。ある意味、百貨店に出店するのと同じ視点や戦略が必要ですよね。

ITをブランディングに生かしていきたい

Photo---これまでお伺いしてきたIT活用の経験や知識を、中華街のためにも活用されていると伺いました。

 横浜中華街発展会協同組合のホームページの立ち上げと組合員のメール環境づくりを、私が担当しました。95年にはサーバーを立ち上げて、ドメインも神戸より先にchinatown.or.jpを取りましてね(笑)。

 というのも、重慶飯店もローズホテル横浜も、中華街があってこその存在だからです。言い方を変えるなら、両者にとって中華街はプラットホームといえます。そこを盛り上げるために骨を折るのは、ビジネスを守り育てるのと同じことなんです。

---その甲斐あって、今や中華街といえば食事と観光の一大拠点になっています。

 まだまだ満足はできません。目指したいのは、銀座商店街。あの強力なブランド力です。なんと言っても「日本の銀座」ですからね。

 同じように、この中華街も「中華街といえば横浜」「横浜といえば中華街」と呼ばれるようなブランドに育てていきたいですし、そのためにインターネットをうまく活用したいと考えています。

---ブランディングやIT活用といった施策を成功させる秘訣のようなものがあれば、ぜひ教えてください。

 いやいや、私は単に「運」がよかっただけですよ。しかし、誤解していただきたくないのですが、「運」とは待っていても拾えるものではありません。文字通り、自分の手で「運んで」くるものだと、私は信じています。そのつもりで周囲を見回していると、いろいろなアイデアやビジネスチャンスが見つかるのではないでしょうか。

---重慶飯店とローズホテル横浜、そして中華街の未来がますます楽しみになってきました。本日は、お忙しいところ、本当にありがとうございました。

Photo取材を終えて

李社長とはこれまでも何度かお話しを伺う機会がございましたが、李社長のエピソードには必ずそこに社員の方々の協力する姿があり、経営者としての求心力、また企業としての素晴らしい一体感を感じております。
今回は企業経営における熱い想いのみならず、『ブランディング』に代表する具体的な経営戦略もお伺いすることができ私自身大きな学びとなりました。
李社長並びに関係者の方々に御礼を申し上げるとともに、今後皆様のますますの御発展をお祈り申し上げます。

株式会社NTT東日本−神奈川 横浜中営業支店
吉宗 歩、渡辺 文隆


CompanyOutline 会社概要
Photo

株式会社ローズ ホテルズ・インターナショナル
ローズホテル横浜は、1981年にオープンしたホテルホリデイ・イン横浜を経て2003年にリニューアルオープン。横浜中華街の玄関口的存在であり、観光やビジネスの場として、また「重慶飯店新館」をはじめとした個性的なレストランを擁すホテルとしても多くのリピーターから愛されている。
 
→会社情報

株式会社重慶飯店
世界のチャイナタウンで最大規模を誇る横浜中華街。その中で1959年に開業した重慶飯店は四川料理の老舗として発展。現在では横浜中華街を拠点に(レストラン4店舗、売店4店舗)、名古屋、岡山にも店舗を持ち、グルメたちをうならせている。今春には大阪店を開業。
 
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